高校生による「楽しいプログラミング教室」Scratch編

対象:小学5・6年生 、保護者 26名
実践日:平成30年8月25日(土)
実践者:岡山県立玉野光南高等学校 一守 克己 教諭 情報科生徒5名

活用したICT PC / プロジェクタ
活用したアプリ Scratch
ポイント ・高校生が講師となり、小学生にScratchを活用したプログラミング教室を、高校を会場に開催

・課題研究で4月からテキスト作成に取り組み、当日の運営、個別対応まで全てを高校生が担当

体験の流れ(120分)

学習課題:
プログラミングでゲームを作ろう。

導 入

○ 担当の先生、高校生の自己紹介。プログラミングしたロボホンから歓迎の言葉。

● 作成するゲームの完成品を提示する

● ゲームを見て、登場したキャラクターやアイテムがどのような動きをしていたか等、気付いたことをワークシートに書き、発表して共有する。

展 開

①猫の動きをプログラミング

● 位置の表し方は座標となるため、小学生には難しいところを、軽妙な説明と的確な手本の操作で、時間を掛けて説明する。補足資料も準備し、理解を促す。

● 猫の大きさ、動き方、速さなどをブロックの組み合わせ方を考えながらプログラミングしていく。

 

②ボールの動きをプログラミング

● ボールがどのような動きをしていたかを想起させ、動きを分割し、その動きの順序を考えながらプログラミングしていく。

○ 個別の対応を3人で担当。小学生が楽しく取り組めるように、タイミングよく優しくサポートに入る。

● ボールをキャッチした時の猫の声や、ボールが地面に落ちた時の音を追加すると、ゲームの雰囲気が高まり、完成への意欲が高まる。

● できたところまでを動作させ、どんな命令が必要で、どのように組み合わせると完成したゲームに近づくのかを考えながら進める。「反復」、「分岐」の命令も活用する。

● 上手く動作しない時には、作成したプログラムのどこがまちがっているかを考えさせ、子供たちが試行錯誤しながらプログラムを修正する姿が見られた。

● 乱数を用いて、いろいろな場所からボールが落ちるようにプログラミングする。乱数は、サイコロを振ったとき何が出るかわからないという例を示して説明。

 

③得点・タイマー・BGMの設定

● 得点の増やし方、残り時間の示し方をプログラミングしていく。この段階に差し掛かると、子供たちは自分で考えて必要なブロックを効果的に組み合わせてプログラミングできるようになっている。

● ゲームのBGMを設定すると、たちまち教室はゲームセンターさながらの雰囲気。高校生はそれを予想して、最後の作業として設定した。

 

④完成

● これまで作ってきたプログラムを一つずつ確認し、一見単純なゲームでもたくさんのプログラムが動いてゲームができていることを実感させる。

● 自分でゲームを作ることができる喜びやおもしろさも伝えることができた。

 

児童・保護者の感想・アンケート

「プログラミングの体験ができて楽しかった。」「結構難しかったけど、できたらすごく楽しかった。」「初めてプログラミングをしてみて、こんなことができるんだなと思い、今度は一人で挑戦してみたいなと思いました。」「楽しかったからまた行きたい」「お姉さんの説明が分かりやすく面白かったです。教えてくれる方も優しくしてくれてよかったです。とても楽しい2時間でした。」「高校生の頑張りには感動しました。本当に良かったです。」

アンケート項目、「楽しかったですか」では「楽しかった」が100%、「高校生の説明やお手伝いはよかったですか」では「良かった」が92%、「プログラミングに興味をもちましたか」では「興味をもった」が73%(興味なしは0%)であった。

高校生の感想・アンケート

「子供たちが、『ありがとうございます』と言ってくれて嬉しかった。」「何か月も練習してきたこともあり、とにかく達成感を味わうことができた。」「最初はScratchが分からなくて大変だったけど少しずつ分かってきて、うまくできた時は嬉しかった。」「小学生に教えることは初めての経験で想像できなかったけど、内容が伝わったときや喜んでくれた時は嬉しかった。」「プログラミング教室をつくることがこんなにも大変だとは思わなかった。5人がそれぞれ役割分担して協力したから、小学生に楽しんでもらえたのかなと思う。」
成長した項目としてあげた項目は「コミュニケーション力」「表現力」「積極性」「協調性」であった。また、大切だと思う項目としては、先にあげた項目に次いで「企画力」「責任感」「感謝の心」「発想力」が続いた。今回のプログラミング教室の経験を生かし、次回への意欲の高まりが伺える。

小学校プログラミング教育の視点から
今回のプログラミング教室は2020年度からの小学校プログラミング教育の必修化に伴い、小学生のプログラミングの学習活動は、以下のように分類されて示されている。

小学校プログラミング教育の手引(平成30年3月 文部科学省)より

今回の取組みは、夏休みを利用して高校を会場として実施したもので、上記の分類では、「E」または「F」に相当するものと考えられる。Scratchでゲームを作ることは、小学校の授業の中ではなかなか取り組むことが難しいが、小学校高学年の児童がプログラミングを体験するにはピッタリの教材である。はじめは難易度が高いと思われたが、2時間後には全員見事に完成することができた。5名の高校生による計画・準備・運営はすばらしい成果を残した。

さらに小学校プログラミング教育の手引(平成30年3月 文部科学省)では、
「プログラミング教育の充実を図る上で、企業・団体や地域等と積極的に連携し協力を得る(外部の人的・物的資源を活用する)ことは有効です。」と述べた上で、「企業の技術者や団体の講師の経験者など、プログラミングの技能に長けた方や、指導経験が豊富な方ばかりでなく、地域住民のボランティアや近くの高等学校の生徒等がメンター(指導者、助言者)となる例もあるなど、協力をいただく人についても様々に考えられます。」と示されている。

玉野光南高等学校では、冬休みにも第2弾を計画している。また、小学校に出向いて、授業でプログラミングも実施する予定。

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