【GIGA取材】高梁市立落合小学校でのタブレット端末を使った算数の授業を取材しました

 

高梁市立落合小学校でのタブレット端末を使った算数の授業を取材しました


【概要】
 高梁市立落合小学校では、学力向上の研究指定を受け、タブレット端末を活用した算数の授業について研究を進めています。今回は、算数科を中心に低学年での授業を取材しました。
  活用していたICT環境は、①1人1台端末(iPad)、②教師用端末(iPad)、③大型提示装置(電子黒板)、④オクリンク(Benesse 授業支援アプリ)。


【教育の情報化の推進に関する活用のポイント】

A 取組の様子


1 「授業支援アプリ」の効果的な活用

 授業支援アプリ「オクリンク」は、児童は教師から配信されたカード(教材) に、自由に文字や絵を書き込んだり、自分が撮った写真を貼り付けたりすることができる。自分が作成したカードは「提出BOX」に送信することで、それらを教師や他の児童と共有することができる。また、2枚以上のカードを並べ替える等の操作も直感的に行うことができ、低学年の児童も扱いやすいと考えられる。
 児童から提出されたカードには、コメントや評価を加えて返すことができ、個別のフォローや提出物チェックの時間の効率化にもつながっている。              


2  学習場面に応じたICTの活用

 「一斉学習」では、アプリの使用で教材を拡大提示して書き込みを加えるなど、画面に集中させて視覚的に分かりやすく説明することができる。また、一度に多くの友達の考え方を画面に提示し共有することにより、友達の考えを自分と比較したり、関連付けたりして理解を深めることが可能である。
 「個別学習」では、画面に書き込んだり消したりすることが容易で、試行錯誤するのにストレスが少ないツールと考えられる。自分のペースで考え、自由に表現することができ、考えた理由も発言しやすくなる。
 また、学習の流れに沿って、『ノート』と『タブレット』、『具体物を切ったり貼り付けたりすること』と『画面上で操作すること』、『実際に周りの友達と話し合うこと』と『考えを書き込んだカードを共有すること』等、『アナログ』と『デジタル』の学習活動をバランス良く組み合わせることで、意見交流も活発になり、学習内容を深め、表現力を向上させることができる。
 低学年の授業におけるICTの活用は難しいと言われることが多いが、必要なカードの取り出し、提出等もスムーズに行うなど、使いやすさという面からも低学年でも十分対応できていると感じられた。児童のICT活用スキルの向上は、より主体的に学びに向かう姿に結びついている。

B ICTの活用の工夫


3 「表とグラフ」~3年生~

 3年生では「目盛りの付け方が違う2つのグラフを比較し、分かりやすいグラフの表し方を考える」という授業を行った。「オクリンク」を利用して、教師が教材カードを児童の端末に送り、児童は補助線や言葉など、自分の考えをカードに書き込み、工夫して表現したものを「提出BOX」に送信した。
 児童が自分の意見を電子黒板に拡大提示することで発表しやすく、聞いている児童達も様々な表現方法があることに気づくことができ、表現力の向上に結び付くと考えられる。


4 「三角形と四角形」~2年生~

 2年生では「三角形に直線を引いて切ると、どんな形がいくつできるか」という授業を行った。児童が三角形の紙を実際に2つに切って作った三角形や四角形をカメラで撮影したものを送信し、全員の考えが電子黒板に映し出された。児童は、友達のカードを見ながら比較し、考えたことを伝え合うことで、多角的な見方や考え方に触れることができていた。


5 「おおきさくらべ」~1年生~

 1年生では「机の縦と横の長さを比べる活動を通して、ものを使って長さを比べられることを理解する」という授業を行った。児童が自分の手を使って「横が何個分」と発表している様子を教師が声をかけながら端末で撮影し、電子黒板に映すことで、友達の考え方を聞きながら説明している手元を見ることができていた。また、1年生はタッチペンではなく指を使ったり、振り返りを文章ではなく、顔文字で表現したりするなど、児童がストレスなく使えるように工夫されていた。


6 「あまりのあるわりざん」~特別支援学級~

 特別支援学級では、「35人の子どもが4人ずつ長椅子に座るには何脚の長椅子が必要か」という「問題の場面に合わせて余りの処理の仕方を考える」授業を行った。長椅子の写真を示すことで生活体験に結びつけ、児童は端末に35個の●がかかれたカードを受け取り、4つずつ囲み、「分ける」「余る」というイメージを画面上でつかむことができており、具体物の操作と抽象的な概念をICTでつなぐことで理解が深まるよう工夫されていた。



【まとめ】

 落合小学校では、児童の発達段階に応じてICTの活用方法を工夫されている点が印象的でした。また、ICTの活用により板書などの時間を短縮でき、児童が思考する時間が十分確保され、学力向上につながる有効な手立てになっていると感じました。
 カードはアプリ内の「時間割」の中に保存でき、紙のプリントのようにファイルに整理する必要や紛失してしまうこともありません。タブレットの中に蓄積された児童の学びの記録は、時間が経って学年が上がっても、従来のノートによる学習よりも容易に振り返ることができます。
 このようにタブレットを従来の筆記用具と同じように『学習の道具』として活用が継続されていく中で、子ども達がどのようにICTと関わっていき、どのような力を身に付けていくか、可能性に期待したいと思いました。

 

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