【GIGA取材】高梁市立有漢中学校でweb 会議システムを使った合同遠隔授業を取材しました

 

高梁市立有漢中学校でweb会議システムを使った合同遠隔授業を取材しました


【概要】
 高梁市立有漢中学校では、6月 30 日から市内の川上中学校とweb会議システム「Meet」を使った合同遠隔授業を始めました。Meetを使って授業担当者が打ち合わせをし、1学期中に3年生の英語と国語の授業でそれぞれ3回ずつ実施しました。
 活用していたICT環境は、①1人1台端末(Windowsタブレット)②教師用端末(Windows タブレット)③大型提示装置(液晶モニター)④ Google Workspace for Education Fundamentals(Meet、Classroom) 。


【教育の情報化の推進に関する活用のポイント】

A 取組の様子


1 1人1台端末を使って他校の生徒と1対1でペア学習

・両校が1人ずつ相手校の生徒とペアになり、ペアごとに指定された個々のルームに入室し学習を進めていた。ペアは事前に教員側で決めており、英語と国語の計6回ペアを固定化して行ったことで、回を重ねるごとに緊張がほぐれ、楽しみながら活動に取り組んでいた。


  3年生【英語】「英語で交流しよう

・英語の合同遠隔授業を「GIGAアイシテル英語」と題し、「英語で自己紹介」「相手の言葉を聴き取り、質問しよう」「自分のおすすめの場所を伝え、相手の言葉にリアクションをしよう」という活動をタブレット端末を使って1対1のペア学習で行った。

・ペア学習をはじめた時は、ほとんど面識のない他校の生徒との対話に緊張している様子だったが、一生懸命「伝えよう」「聴こう」としていた。


  3年生【国語】「俳句を味わう

・国語の合同遠隔授業を「GIGAいとおかし国語(俳句編)」と題し、「俳句を味わう」をテーマに、担当した俳句について個別に調べたことをペアで伝え合うことによって各自の考えを深めた。

・英語の合同授業と同じ相手ということもあり、緊張もほぐれ、お互いにうなずいたり、ジェスチャーを使ったりして「伝わるように伝える」ことを心がけていた。

・前半はペア学習、後半は個人思考など、交流する意味が感じられるよう、必要に応じて効果的に端末を使うことができていた。

・機器の操作にもだんだんと慣れてきており、回線のトラブルがあっても、ルームに入り直したり他の回線を使って相手とコミュニケーションを取ったりするなど、柔軟に対応していた。

 

B ICTの活用の工夫


2 1人1台端末とヘッドセットでペア学習

・ペア学習を進める際、ヘッドセットをつけることでハウリングが防止でき、お互いの音声もクリアに伝えられ、集中することができていた。

・支援の必要な生徒には、支援員も端末を使ってマイクとカメラをオフにしてルームに入室しサポートすることで、安心して学習に参加することができていた。


3 大型提示装置(液晶モニター)とタブレットの効果的な活用

・大型提示装置で全体を映し、お互いの様子を見ながら活動することで、同じ教室にいるような一体感を得られていた。また、川上中学校の生徒の反応が伝わり、刺激を受けることで、「自分たちも負けないように頑張ろう」という雰囲気になっていた。

・両校の教員同士が大型提示装置の画面越しにデモンストレーションを行うことで、ペア学習のイメージをつかませていた。

・全体、ペア、2ペアずつの4人組など、状況に応じて組み合わせを変えて授業は進んだが、生徒はスムーズに切り替えることができていた。また、全体へ指示するときは、カメラオフや音声ミュートの指示をするなど、活動にメリハリをつけ、集中しやすい環境を整えていた。

 

C 成果と課題


4 合同遠隔授業で得られる教員の学び

・小規模校では、一つの教科に複数の教員の配置が難しいことが多く、若手教員の授業力の向上に課題をかかえることも多い。そこで、他校の同一教科の教員と指導方法を検討し、一つの授業を作り上げていくことは、若手だけでなく、ベテランにとっても大きな学びになると思われた。

・国語の授業を担当した採用3年目の教諭は「どの場面でどのような『発問』『指示』『説明』を行うと効果的か等、授業中にもベテラン教員から学ぶことが多かった」と述べており、貴重な経験であったことがうかがえた。

・英語は初任者と2年目の若手同士でお互いにアイディアを出し合いながら新しいことにチャレンジしており、「自分の不足している部分がよく分かった」「目の前の生徒だけでなく、画面に映っている生徒も自分の生徒と思って授業をした」と感想を述べており、切磋琢磨しながら力量を向上させている。


5 ICT環境の整備と生徒の意識向上

・合同授業を行う際に回線の接続が不安定であると、スムーズに活動が行えず、生徒はストレスを感じる。また、授業者も機器の設定に手間を取られ、本来の教科の指導に重点をおけない等の課題が生まれる。

・現在は学校が設定した中学校と合同授業を行っているが、生徒が「世界が広がる」ことを体験し、自分たちから「こんな学校と合同授業をしてみたい」と提案してくるような「主体的につながり、関わろうとする」態度を育てるために、どのように遠隔授業を広げていくかが課題とのことだった。

 


【まとめ】

 有漢中学校は少人数のため、生徒が多様な考え方に触れる機会が少ないことも合同遠隔授業を始めるきっかけになっていました。合同授業を始めた当初は、うまくコミュニケーションをとれなかった生徒も、回を重ねるごとに積極的になり、画面の向こうの同級生の姿を通して自己認識を深め、成長していくの は大きな成果で あると感じました。また、生徒だけでなく教員が他校と協働し、学校の枠を超えた「ネットワーク」を構築していくことは、授業力向上につながる有効な手立てであり、今後さらに活動の幅が広がることを期待したいと感じました。

 

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