【GIGA取材】岡山県立東備支援学校でのGIGAスクール環境の活用と地域交流の様子を取材してきました

岡山県立東備支援学校でのGIGAスクール環境の活用と地域交流の様子を取材してきました


【概要】
 備前市に位置する岡山県立東備支援学校は、東備地域と岡山市の一部を通学区域とする特別支援学校です。
 児童生徒の卒業後の豊かな生活につながるよう、地域との関わりを大切にしながら、主体的な学びと自立につながる力の育成を目指した教育を行っています。地域の伝統工芸でもある備前焼の制作や手芸、農業等に関する作業学習、販売実習、環境美化の活動、校外学習や体験学習等、数多くの学習や行事で、積極的な地域との交流が日常的に行われています。
 児童生徒にとって、将来の生活の場となる地域との交流は、実践的な学びを通して人間関係を広げ、人とのつながりを作り、就労の場や生活の基盤を築いていくことにつながります。
 こうした日々の学習の中で進められてきたICT活用は、教師が大きく映して見せながら説明する場面での活用や、個に応じた学習の中でアプリを活用し、主体的に自ら働きかける場面での活用が中心でした。GIGAスクール構想の推進によるICT環境整備により、1人1台端末の環境が実現し、新たな活用が始まり、積極的な情報発信も行われています。

校内にある本物の登り窯

【教育の情報化の推進に関する活用のポイント】

A 児童生徒の主体的な活動を充実させる活用


1 QRコードの活用

・電子マネーやパンフレット等、日常生活でも目にすることが増えてきた「QRコード」を学習活動の中に取り入れている。校内でのオリエンテーリングとして、チェックポイントにあるQRコードを見つけ、読み込んだ資料に書いてある課題に取り組む学習を行っている。ゲーム的な要素もあり、学習を繰り返すうちに児童生徒も慣れてきて、QRコードの読み込みが、児童生徒の主体的な活動のきっかけになり、興味を持って意欲的に行動することにつながっている。

QRコードを読み込んでミッションに挑戦
ミッション 例

2 プレゼンテーションアプリの活用

・iPadのプレゼンテーションアプリのKeynoteを積極的に活用している。教師の説明場面で使う提示用の教材の他、児童生徒の学習のまとめや発表でも活用している。操作がわかりやすく、作成した教材や発表資料を簡単に共有でき、参考としたり再利用したりすることもできる。

Keynoteを使った一斉指導

3 アニメーションの作成(高等部)

・高等部の美術ではiPadを活用したアニメーションの作成に挑戦した。画用紙と割りピンを使って動物やキャラクターを作り、iPadの写真機能を活用して1コマずつ撮影していく。全体の動きをイメージしながら、各パーツの位置を決める。完成した動画をみんなで鑑賞して楽しむことができていた。

1コマずつiPadで撮影

4 生徒会選挙(高等部)

・高等部の生徒会選挙では、ポスターのQRコードから立候補者の公約を見ることができるようにしたり、Google Formsを活用して、iPadから投票できるようにしたりしていた。生徒が各自で端末を操作し、主体的に行動することにより、立候補者の演説や公約に興味を持ち、自ら「選ぶ」ことにつなげていく。主権者教育の基礎的な学習にICTが役立っていた。

5 PC検定(岡山県特別支援学校技能検定)

・パソコンによる文字入力や文書作成の技術向上を目指して岡山県特別支援学校技能検定のPC検定に挑戦している。総合的な探究の時間や朝のチャレンジタイムで練習を重ね、各自で上の級や段の合格を目指している。検定は決められた時間内で、課題となる文章を正確に入力することが求められる。具体的な目標が見えることが、練習する意欲につながっている。

検定に向けて繰り返し練習

B 地域交流と情報発信を充実させる活用


6 Web会議システムを活用した学校間交流(小学部・中学部)

・小学部と中学部では、近隣の学校とWeb会議システムを活用した学校間交流を行っている。事前の教員間の打合せもオンラインで行った。直接話ができる等、対面の交流でしか得られないものも多いと思われるが、感染防止対策と効率化等の複数の効果があった。従来の対面での交流に合わせて、感染防止対策等の状況も踏まえながら、交流の継続の方策や効率化の一つとして考えられる状況ができている。

交流の打合せもオンラインで

7 Web会議システムを活用した家庭訪問

・感染症対策により学校での活動が大きく制限され、変更や中止が余儀なくされる中、Web会議システムの活用は、大きな可能性がある。保護者との関係づくりは今後の児童生徒への支援に欠かすことができず、必要に応じて家庭訪問にもオンラインを取り入れた。保護者の負担を減らすことができると同時に、ICT機器を活用する経験を増やし、今後の端末を持ち帰っての家庭学習へもつながると考えられる。

8 教員研修での遠隔・動画技術の活用

・教員研修でも積極的にWeb会議システム等の遠隔や動画の技術が活用されている。校内研修では、感染防止対策として全員の集合を避け、学部単位やグループ単位で部屋を分けて、校内配信で行っている。また、研究発表等も外部参加者へ向け遠隔で行い、新たな発表形態として活用されている。移動時間や会場設定の柔軟性ができ、メリットを生かした活用が考えられている。また動画を使った研修は、作成段階での負担は増えるものの、繰り返して広く活用することができる。

オンラインのメリットを生かした研修

9 ブログによる情報発信

・地域交流を進めていくには、積極的な情報発信が大切になる。東備支援学校は、ホームページやFacebook、Instagramを通して、各学部の活動の様子を知らせたり、給食のメニューを毎日更新したりするなど、積極的な情報発信を続けている。学校の取組を広く知ってもらい、児童生徒の頑張りを知らせることは、学校の活動や児童生徒の障害への理解を進め、学校の応援団を増やすことにつながっている。

わくわくとうび

【まとめ】

 12月に行われた「ふれあいとうびまつり」では、それまでの学習のまとめとして、学習の発表や作品展示、販売実習等が行われ、児童生徒の主体的な活動の様子と保護者や地域の方々の協力や交流の成果にふれることができました。発表の中では、絵カードとしての提示や音楽再生で、販売学習では、レジやバーコードリーダーとしての活用されるなど、いくつものICTの活用場面がありました。また、当日見に来ることができなかった人たちのために、ブログを通して発信する、といった自然な形で活用がされていました。いずれも普段の学習の延長で、ICTを使うことを、わざわざ考えるのではなく、GIGAスクール構想に沿って、無理のない必要に応じた活用がなされていました。こういったことの積み重ねが、児童生徒の将来につながる生きた力になるのではないか、と感じました。

販売学習ではiPadをレジとして活用

 

 

 - 特別支援学校 校務のDX, 校内研修