【GIGA取材】小中一貫教育校(新庄村立新庄小中学校)でのGIGAスクール構想の推進を取材しました。

小中一貫教育校(新庄村立新庄小中学校)でのGIGAスクール構想の推進を取材しました。


【概要】
 新庄村立新庄小中学校は平成31年4月より、小中一貫教育校になりました。義務教育9年間を「ふるさと新庄学」を核に、地域との双方向の関わりの中で「地域との共生を考える」教育を行っています。豊かな自然に触れながら、身近な地域の歴史や文化、産業等を学び、課題解決学習を繰り返しながら、地域の一員として活躍できる力を身に付けています。主体的な学びを支える基盤としての情報活用能力に注目し、思考ツールの活用や話し合い活動に関する研究も行っています。
 GIGAスクール構想以前より、児童生徒教員の1人1台端末(iPad)を実現しており、授業の中で授業支援アプリ(ロイロノート・スクール)の活用が進んでいます。
 活用されている主なICT環境は、①1人1台端末(iPad)②教師用端末(iPad)③大型提示装置(超短焦点プロジェクター)④画面転送(Apple TV、Miracast)⑤授業支援アプリ(ロイロノート・スクール)⑥校内Wi-fi環境、※大型提示装置(短焦点プロジェクター)の導入に合わせて黒板をホワイトボードに改修


【教育の情報化の推進に関する活用のポイント】

A ICTを活用した提案授業の取組


 新庄小中学校では、校内研修の中でICTを活用した提案授業の取組を行っている。教員全員が、これまでの取組を一歩進め、県教委(義務教育課)が示しているICT活用のSTAGE3(児童生徒と共に学び方を決めて進める授業)の実現を目指した授業改善に取り組んでいる。提案授業と研究協議の様子は、新庄村教育委員会で作成される「提案授業レポート」としてまとめられ、全職員で成果と課題を共有し、次の授業づくりへと生かされ、広い視点から授業改善が検討されている。実施された提案授業の様子を紹介する。

1 体育科「陸上運動(走り幅跳び)」(小5・6)

・体育館での走り幅跳びの練習と改善にiPadを活用している。試技の様子を動画で撮影し、良かった点やより良くなるための改善点を、友達や教師と話し合った。動画を使うことにより、自分の試技を客観的に捉えることができ、他の児童の試技を参考にしながら、自分で改善を考える手助けになっている。

・動画を見て気づいた点や改善点を、ロイロノート・スクールを使ってまとめ、発表していた。

・体育館でクラウドのデータを扱うには、体育館にもWi-Fiが整備されている必要があるが、新庄小中学校では、体育でのICT活用も想定して、環境が整備されている。

伝える活動で考えをまとめ深める

2 国語科「じどう車ずかんをつくろう」(小1)

・紹介する自動車の説明や動画、写真、音声をロイロノート・スクールのカードにまとめ、全員のカードを集めて、デジタルならではの自動車図鑑を作成した。

・デジタルのカードは、修正や複製、受け渡しが容易で、児童がiPadの操作に慣れれば、アナログでの作業より効率的に作成することができる。また、より分かりやすくなるような工夫を試行錯誤する時間を増やすことができる。

・低学年はタイピングがまだ十分にできず、五十音表を使ったり、手書き入力や音声入力を使ったりしている。

デジタルならではの表現方法を体験

3 生活科「つくって ためして」(小2)

・ロイロノート・スクールを使って、保育園の年長と1年生を招待する「おもちゃ遊び大会」の説明プレゼンを作成した。

・教師の支援は児童の考えを引き出す言葉がけに絞り、グループで協力しながら試行錯誤させ、主体的な学びになるよう配慮していた。

・プレゼンの作成には、動画や写真の撮影や、音声やペン入力による文章入力など、さまざまなiPadの基本的な操作スキルが必要だが、日常的な活用で身に付けた使い方を、組み合わせ、工夫しながら、自分の考えを表現するプレゼンを作成していた。

日常の活用を駆使して表現する

4 音楽科「MyMelody」(中2)

・音楽アプリ「GarageBand」を使って、ハ長調の特徴や基本を押さえながら、基本となる旋律に自分で考えたアレンジを加え、オリジナルの旋律を作成した。

・アプリで作成することにより、旋律のアレンジを正確に繰り返し再生することができ、旋律を確認しながら自分のアイデアが反映されるよう簡単に修正することができる。

・アプリを使うことにより、創作活動に必要な知識やスキルを補うことができ、全員が創作そのものの楽しさを味わうことができた。

創作活動の楽しさを体験

5 体育科「器械運動(マット運動)」(中1)

・マット運動の授業では、自分の演技をiPadの動画機能で撮影し、改善のポイントや、動きのイメージの実現に取り組んだ。

・それぞれの演技が「できた」「できない」という二極的な評価ではなく、個々の課題を自分で把握し、良いところとさらに良くするところには、という視点が持てるように配慮し、考えながら運動することを体験させていた。

・体育の授業では、iPadを操作する時間を多く取ると体を動かす活動の時間が少なくなってしまうため、考えたりまとめたりする活動を、家庭学習と連携するようにしていた。

客観的に自分を捉えるための活用

6 総合的な学習の時間「新庄の魅力を伝えよう」(小3・4)

・1、2年生に地域の良いところを知ってもらうために、地域の特徴である「ヒメノモチ」「傘おどり」「がいせん桜」をテーマに発表をした。

・iPadで作成したプレゼン、動画、クイズを使い、発表者は声の大きさや話す速さ、目線など、相手に分かりやすく伝えるといった視点を意識し発表していた。

・発表を聞いた1、2年生も、感想や質問をその場でロイロノート・スクールにまとめ、発表者へ送っていた。

伝える相手を意識したプレゼン

7 小中合同学習発表会(小中全校)

・平成30年度から小中合同の学習発表会を行なっている。日頃の学習の成果を保護者や地域の方に向けて発表した。

・小学校低中学年は総合的な学習の時間や国語科での学習成果を劇化し発表した。高学年や中学生は総合的な学習で探究してきたことを発表していた。

・中学生は、地域学習の成果をまとめ、地域の活性化を目指した行政への提言を行った。発表は動画等の資料作成でもICTを多く活用し、小中の学びの集大成となっていた。

小中の学びの積み重ねを実感

B GIGAスクール構想の推進による今後の展望


8 遠隔技術の積極的な活用

・中学2年生は広島での校外学習で、広島県の廿日市立宮島小中学校(宮島学園)と学校間交流を行っている。訪問を前に事前学習として、Web会議システム(Zoom)を活用して、遠隔での交流を行った。お互いに自己紹介したりゲームをしたりすることにより、交流への見通しが持て、期待が高まった。限られた交流の機会を、離れていながら経験し、対話の経験を増やし、交流会をより意義のあるものにすることができた。

多様な交流は対話を充実させる

9 探究的な学びの充実

・総合的な学習の時間を中心に、「ふるさと新庄学」が行われている。「地域おこし協力隊」の方々の出前授業など、多くの地域の人と関わり、学ぶことを通して、わが新庄村を理解すると同時に、地域が抱えている課題にも目を向け、小学校での学びは中学校に引き継がれ、より深い探究学習として展開される。ICTを活用した教科での学びの経験は、考える、表現する、伝えるなど、学習基盤として身についた学びのスキルとして、応用的な力として発揮することが期待できる。

教科での学びを地域で実践

【まとめ】

 ロイロノート・スクールを中心とした主体的に思考させるための端末活用は、学校独自の先進的な取組です。教員の異動を踏まえた取組の継承が重要になると感じました。情報活用能力の育成の視点を取り入れた授業づくりについては、校種間の連携と系統性の必要が注目されており、新庄小中学校の取組は他校でも参考になる事例だと感じました。今後は近隣校などとの遠隔技術の活用を展望されていました。これまでの取組に新たな活用を取り入れ、さらに先導的な取組となることが期待できます。

 

 

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