【GIGA取材】岡山県総合教育センターにおける教育の情報化の取組をまとめました

岡山県総合教育センターにおける教育の情報化の取組をまとめました


【概要】
 岡山県総合教育センターは、今年度で開所15年目を迎えました。教職員の研修機関として、2019年度は、年間に延べ約750講座を実施し、延べ約25,000名が受講しました。
 近年の急速な社会の変化に対応するため、学校では新学習指導要領への対応や働き方改革が求められており、教職員研修の在り方も変化してきています。
 ICT機器やインターネット技術を中心とした通信環境の整備も進み、eラーニングや遠隔技術を活用した新たな研修形態も可能になってきました。
 一昨年来のコロナ感染症防止対策において、教育の情報化は加速され、センターでも研修の質の向上と効率化の取組を進めています。その様子を紹介します。


【教育の情報化の推進に関する活用のポイント】

A 研修講座における形態の工夫


1 遠隔研修の取組

・県立学校では令和2年5月から、市町村立学校では令和2年6月から、管理職研修、経験年数別研修を中心に、Web会議システムを活用した教員研修を実施している。

・受講者は各学校や各教育委員会で受講でき、移動の負担が少ないという長所もあるが、受講者同士の交流がしにくい面もある。

・県内ほぼ全校が使用できる「Zoom」を中心にGoogle Workspaceのサービスを組み合わせている。

・当初は感染症防止対策として実施してきたが、令和3年度以降も、研修内容に合わせて計画的に取り入れている。

・県内各学校のICT環境とセキュリティーポリシーの違いにより、受講者が使用可能なWeb会議システムやクラウドサービス等が異なり、研修環境に制限が生じる場合がある。今後、共通で使える環境が広がると、クラウドでの情報共有等、活用の幅が広がる。

研究授業を配信した遠隔研修(初任研)

2 ハイブリッド型研修の取組

・令和2年10月に、eラーニングシステム「e研修所おかやま」をリニューアルし、eラーニングシステムによる動画やPDF資料の掲載が容易となり、研修講座で積極的な活用が進んでいる。

・eラーニングと集合研修や遠隔研修を組み合わせることにより、研修の一部を動画や資料を使って事前又は事後に行うこともできるようになった。

・集合研修の前に「事前eラーニング」を行うことにより、協議・演習等、集合研修ならではの協働的な研修の時間を増やすことができる。

・研修動画はYouTubeチャンネルで、約60本を公開している。

eラーニングシステムの研修資料

3 ハイフレックス型研修の取組

・令和3年7月より、センターで行うすべての研修講座を対象に、受講者が「集合研修」又は「遠隔研修」の研修形態を選んで受講できる「ハイフレックス型研修」を実施している。

・「遠隔研修」で参加した場合も、協議や演習等のグループ活動に参加でき、「集合研修」で参加した場合と同質の研修を受けることができる。

・会場設営やWeb会議システムの準備や操作、画像と音声の調整等、講座運営の新たなノウハウが必要でだったが、学校現場や受講者の状況に柔軟に対応でき、どのような状況になっても「学びを止めない」研修が実現できている。

・日常的な配信の経験は、指導主事のICT活用のスキル向上につながっている。 

集合研修と遠隔研修を組み合わせて実施

B 研修資料の作成と研修支援


4 教育の情報化ユニット研修

・GIGAスクール構想の推進において各校の課題となっている「教員のICT活用指導力の格差」の問題への対応として、いつでもどこでも短時間で研修できる研修資料「教育の情報化ユニット研修」を作成した。授業や校務でのICT活用を進めるきっかけとして、個人研修や校内研修での活用を期待している。

・令和2年度に「GIGA端末導入期編(31unit)」と令和3年度に「授業づくり編(4unit)」があり、1ユニットは、研修資料(閲覧用と印刷用)と動画で構成され、10分程度の研修時間で、いつでも繰り返し視聴することができる。

・経験年数別研修講座でも事前課題として活用している。

・StuDX Style(文科省)でも「自治体の事例紹介」として紹介されている。

5 Web資料「おかやまICT活用実践事例集」

・令和3年度当初より多くの学校で、授業での1人1台端末の活用が本格的に始まり、様々な実践が進んでいる。また、具体的な活用方法や実践事例を学びたいというニーズも高まっていることから、センターでは県内の学校を取材し、事例としてまとめWeb資料「おかやまICT活用実践事例集(GIGA取材)」として順次公開している。

・事例は授業での活用だけでなく、推進に関する組織体制や校内研修の様子、遠隔技術や教育クラウドの授業外での活用も取り上げている。

・訪問や遠隔で、校内で中心となる担当の教職員に話を聞き、センター側の担当者が記事としてまとめ、その後、何度か校正のやり取りをして公開している。

・取材先の学校からは「これまでの実践を振り返る事ができた」「校内の様子を宣伝する機会になった」といった感想を聞くことができた。

C 推進体制の整備と校務への活用


6 指導主事の1人1台端末の活用

・令和2年10月より、センターの教職員もWindowsタブレットで1人1台端末の活用を始めている。

・Teamsを使ったペーパーレスの会議、連絡や書類の共有、ZoomやMeet等のWeb会議システムの活用等、日常的に使うことにより、活用場面が広がっている。

・会議や業務での使用が、研修講座でのICT活用を推進し、クラウドサービスの積極的な利用や遠隔研修・ハイフレックス型研修のスムーズな運営につながっている。

研修運営や所内の打ち合わせで端末を活用

7 所内学習会の取組

・所内での1人1台端末の導入時から、所内DX推進のミニ研修を行っている。基本的な端末の使い方に始まり、所内の情報機器への接続方法、アプリやクラウドサービスの使用方法など、希望者へ月1~2回30分程度の研修を行っている。

・研修の様子は、動画として共有し、個人研修の資料として活用できるようにしている。

所内ミニ研修「最新機器の紹介(360°カメラ)」

【まとめ】

 県内の学校への取材を通して感じていることの中に、授業だけICT活用が進んでいる学校はないということがあります。授業以外の校務で教師が日常的にICTを活用し、その良さや利便性を感じることが授業での活用につながってくるのかもしれません。そういった意味でも、センターの取組は、日常の業務の中で1人1台端末のを活用することにより、ICT活用のスキルを身に付け、そのことが研修講座で生かされていくと考えています。
 GIGAスクール構想の推進には、校内を動かす大きな原動力が必要です。教育の質を向上させ、効率化を図るという一見矛盾した二つを両立させるためには、教職員一人ひとりが「より良い学びを目指し、ICT活用の良さを知り、授業改善に取り組む熱意を持つこと」が、学校を動かす大きな原動力となると思います。

 

 

 

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